Beethoven in Heiligenstadt

31/3/2018(Wien)
トラムD線の終着駅はベートーヴェンガング。ここから「ベートーヴェンの散歩道」は始まります。ブダペスト郊外に美しい緑が広がるマルトンバーシャールがあるように、ウィーン郊外のこの丘陵地はベートーヴェンにとって創作の泉でした。今ではすっかり高級住宅地になってしまい、ベートーヴェンが生きた頃の牧歌的な光景は見られませんが、散歩に沿って流れる小川のせせらぎは《田園》交響曲から聞くことができます。ハイリゲンシュタットは自然主義者ベートーヴェンにとって、音が溢れる環境だったにちがいありません。詩人グリルパルツァーの家の2階を借りた「ベートーヴェン夏の家」では、この交響曲第6番が産声をあげ、今日ホイリゲになっている「マイヤーの家」では、シラーの詩に寄せた歓喜の歌(《第九》交響曲の第4楽章)がいよいよ体現されようとしていました。同時にベートーヴェンにとって苦悩の場所でもありました。奇しくも聴覚を失いつつあるベートーヴェンがここで生々しく聞いた音は、甥カールの銃声でした。1802年10月に彼は『ハイリゲンシュタットの遺書』を残しますが、彼はこの「遺書の家」に生涯11回にわたって滞在することになります。前傾屈で眉間に皺を寄せて歩く気難しいベートーヴェンと、軒を並べる賑やかなホイリゲはあまりに対照的です。ホイリゲでワインに酔うシューベルトは生粋のウィーンっ子であり、ベートーヴェンの生き様とは全く異質。ベートーヴェンは「生きる」ということを真剣に考えた人で、あまりに真剣に考えたために全人類の苦悩を背負い、人類愛を説かなければならなかったのかもしれません。《田園》から聞かれるのは、彼の死ぬ瞬間でさえ鳴り止まなかった苦悩の雷鳴です(彼の没日は激しい雷雨だったと伝えられています)。ハイリゲンシュタットを訪れると、私たちはベートーヴェンの苦悩の大きさを思い知りますが、いつもそれを乗り越えようとした彼の愛の大きさにむしろ胸を打たれます。ベートーヴェンへの愛、それは深まる愛です。展示室ではBBCが制作した『Beethoven's Eroica』(2003)が上映されています。《英雄》もまたハイリゲンシュタットで作曲された交響曲。世界を永遠に変えた瞬間を描いたドキュメンタリーフィルムなので、ここでシェアしたいと思います。
https://youtu.be/UtA7m3viB70

 
 
 
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.31 2018 海外漫遊 comment(-) trackback(-)

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