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Belvedere Torso in Musei Vaticani, Roma

26/11/2018(Roma)
〈ミューズの間〉でひときわ目を引いたのが《ベルヴェデーレのトルソ》でした。紀元前1世紀にアポロニオスが制作した大理石の彫刻で、失われた下半身を加えたら2メートルを超える大きさを誇ったことでしょう。力を込めて上半身をひねっているポーズだけで、猛獣と立ち向かう若い男性の勇敢さが部屋いっぱいに溢れ出ています。このヘラクレスを想わせるトルソは、ルーブル美術館の《ミロのヴィーナス》とまさに好対照。このトルソの前に立ち止まった多くの人が、ミケランジェリ・ブオナローティの人生に想いを馳せるのではないかと思います。30代のほぼ全てをかけてシスティーナ礼拝堂の天井画を完成させたミケランジェロが、クレメンス7世に命じられて祭壇画の制作にも取り掛かったのは60歳を迎えた1535年のこと。フレスコ画を描く肉体的苦痛を考えただけでも、この歳で再び創造への情熱をたぎらせるのは並々ならぬことだったにちがいありませんが、ミケランジェロは再びこのトルソに立ち戻りました。かつてユリウス2世(天井画をめぐりミケランジェロと大きな確執が続いた)がミケランジェリにこのトルソの修復を命じた時、「このトルソの朽ち果てた姿は、十分すぎるほど美しい」といって拒んだそうですが、このエピソードが示すものは芸術の神髄です。ラファエロもミケランジェロも、その後に続くマニエリスムの芸術家たちも、このトルソのデッサンに耽ったのでしょうが、模倣はあくまで模倣にすぎません。絵画にしろ、彫刻にしろ、音楽にしろ、外観や様式では表しきれない部分に真実が宿り、生命の灯がともるのですから、心の耳を澄ませ、心の眼を開かないかぎり、何人も創造の源泉に触れることはできないのです。完全な姿でないトルソだからこそ、《最後の審判》におけるキリストの力強さが導き出され、天国に昇る者と地獄に堕ちる者を裁くシーンが結実しました。ミケランジェロの描くキリストは、私たちが想像する痩せ細った像とは大きく異なります。ルネッサンス時代ゆえの業であり、イタリア人としての古代ギリシアへの憧れでもあります。時を隔てて、人間は想いを巡らせるものです。それから350年が経ち、オーギュスト・ロダンがこのトルソから《考える人》を産み落としたことは感動的ですらあります。

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.26 2018 諸藝雑記 comment(-) trackback(-)

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