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Sant'Andrea della Valle: Act 1 of “Tosca”

29/11/2018(Roma)
今回の仕事場までの最寄りのバス停が、ちょうどサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会の前でした。ジェズ教会と同じくデッラ・ポルタによる設計で、その影響を受けながらカルロ・マデルノがファサードとクーポラを完成させたこの教会は、なによりも《トスカ》第1幕の舞台として知られています。このオペラが最も表しているのは1800年のローマ、つまりナポレオン1世が北イタリアを再獲得してイタリア王国を建国する前の、不穏な政局を多分に反映した空気感です。第2幕はローマの警視総監スカルピアが主人公となりますが、反ナポレオン派の彼が公邸に使ったファルネーゼ宮が現在のフランス大使館となっているのも、このオペラを理解する上で大事なことでしょう。ローマにおけるファルネーゼ家の栄光と権謀の数々については言うまでもありません。そしてこのオペラはサンタンジェロ城で終幕を迎えます。ここは歴代の教皇によって強化され、牢獄を含む軍事的施設としてサン・ピエトロと地下で通じている、まさにローマの要塞。それだけで魑魅魍魎がうごめく夜のローマが印象づけられ、主人公の全員が絶命を遂げる悲劇が完結するわけです。ローマを歩いていると、この3つの舞台を結ぶ線がテヴェレ川に沿うジュリア通りであることに気づきます。貴族の豪邸が立ち並ぶこの美しい小径も、夜は闇が深く、多くの暗殺者が暗躍したにちがいありません。人間の持つ尊厳や愛の深さと、それを一握りで潰してしまう権力の暴力性といった二律背反。とはいえ、芸術はそのような構図を明らかにするために存在するものではありません。歴史に翻弄される人間の強さと脆さ、限りある命、気高さと愚かさ、愛と憎しみ、飢え、葛藤を精いっぱい描くことで、生きたこと自体の証をするのが芸術です。芸術(art)の語源はラテン語のarsで、自然に対置される人間の、生きていくための「術」。《トスカ》は紛れもなく稀代の天才ジャコモ・プッチーニの仕事です。

 
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.29 2018 諸藝雑記 comment(-) trackback(-)

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