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Workshop in Iwaki (Burgmüller's works)

2019年9月13日(いわき)


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 仙台に引っ越した中学2年生の時、地元ではなかなか親切にしてもらえなかった中、審査員にも関わらずコンクールで起立して拍手を投げかけてくださった故・若松紀志子先生のお誘いで、学生のうちからいわきで演奏の機会を何度も与えていただきました。生前の若松光一郎(洋画家)、佐藤忠良(彫刻家)といった美術界の巨匠に間近で演奏を聴いていただけたことは、今となっては宝のような思い出です。
 東日本大震災があった年、茨城空港からレンタカーで東北に向かい、真っ先に入ったのがいわきでした。ボランティアを兼ねて福島第一原発20km圏ぎりぎりまで見て回り、宮城県の沿岸部を北上しました。この震災で日本は大きく変質してしまった。被災地を目の当たりにしなかったら、その実感は未だになかったかもしれません。その頃ちょうどいわきで災害対応の先頭に立たれておられた世界的医師の石井正三氏とは、その後ハンガリーの知人からの紹介で邂逅を果たし、今日では私たち夫婦にとってかけがえのない友人となりました。歴史と芸術とワインを心から愛されている大人物です。
 いわきには震災の年以来ですので、実に8年ぶりの訪問。激甚の被災地は見違えるばかりに復興を遂げましたが、思うことは失ったものの大きさばかり。今回いわきでの公開講座を企画してくださった地元の先生方からも、長きにわたるご苦労をうかがいました。お招きくださったことに感謝の気持ちしかありません。
 いわきを発つ前、ART SPACE ELICONA を訪ねましたが、自分の家に戻ってきたような気持ちがしました。光一郎先生が亡くなられた後、氏の遺品を収納するために建設されたホール&ギャラリーで、爾来音楽と美術のオアシスとなっています。玄関扉を開けると、ホールから紀志子先生の軽妙な足音が聞こえてくる気がして、往時のまま時が止まっているかのようでした。そして被害を免れたスタインウェイがステージの上にいつものようにありました。勧められるがままにシューマンの《アラベスク》を弾きましたが、ピアノの響きがこのように美しいと思ったことは初めてで、目頭が熱くなるばかりでした。忘れがたい2日間となりました。

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