TMSO with Kazushi Ono at Tokyo Bunka Kaikan

8/6/2016(東京)
イアン・ボストリッジを追っていると、必ずブリテンの名演に立ち会う幸運を得ます。最後の音が聞こえなくなった後も大ホールが静寂で微動だにしなかった『戦争レクイエム』(1月15日@すみだトリフォニーホール)から束の間、今回の『イリュミナシオン』では、歌い上げられたアルチュール・ランボーの短い人生が白昼夢のように、しかし確かな熱さを伴って感じられました。ランボーはフランスが生んだ天才詩人です。普仏戦争とパリ・コミューンで揺れるフランスに彗星のごとく現れ、燃え尽きるように生きた激動の半生と彼の文体は、あらゆる詩人に衝撃を与えました。アンリ・ド・レニエもそうした一人で、そのレニエの詩情に和音を乗せたドビュッシーは、印象派の名に相応しい色彩感で『雲』を描きました。今日の東京都交響楽団はまるでフランスの管弦楽団が響かせるような発音で、彩度の変化を鮮やかに描き出しました。主音を抜くことで得られる和声の浮遊は、スクリャービンのキーワードでもありました。重力の世界での浮遊を実践したドビュッシーに対し、スクリャービンは大気圏を突き抜けて宇宙空間に達しようと試みたのですが、あれほど太陽の引力に魅せられた作曲家は他に見当たりません。迫り来る熱のうちにすべてが溶けてしまうという妄想に取り憑かれたまま、まもなく自らの肉体が夢と共に燃え尽きてしまいました。スクリャービンは神秘和音と複合リズムという翼を得たイカロスでした。私たち日本人にとっての『法悦の詩』はむしろ「まさに刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏にかくやくと昇った」という三島由紀夫の一行に凝縮されるでしょうが、宇宙を初めて有人飛行したガガーリンがその後どうなったかを思い返す時、この交響曲で鳴り響くサウンドは、同時に警鐘のようにも聞こえてくるのです。今宵のマエストロ大野和士によるプログラミングは、陰影に富んだ物語だったという以上に、熱狂が持つネガティブな余韻で色濃く織り上げられたドラマで、人間の内側を覆う闇をもって夜の帳が下ろされました。
http://www.tmso.or.jp/j/topics/detail.php?id=1016

 
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.08 2016 諸藝雑記 comment(-) trackback(-)

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